
今日で東日本大震災から9年。
新型コロナウイルスのニュースに混ざって、
各局が今の被災地の状況などを伝えました。
毎年この時期になると話題になるのが、
緊急特番の中心となっていたテレビ朝日よりも先に
津波の到来に気づき、いち早く伝えるべきだと思っていた
岩手朝日放送の山田理アナウンサーの叫びです。
なぜ叫ばなければならなかったのか
この映像には山田アナウンサーの叫びを評価する声の一方で
「なんてテレビ朝日はのんきなんだ」
「テレビ朝日は無能」などのコメントが相次ぎました。
結果からいうとその通りです。
津波の到達予想などのテロップの後ろには
既に押し寄せている津波の映像が確認でき、
東京で気づきすぐさま岩手朝日のスタジオを呼べば
山田アナウンサーが叫ぶ必要もなかったのです。
ただ、テレビ朝日のアナウンサーが画面いっぱいのテロップを
読み上げながら、後ろに映っている状況に気づけたのかという点です。
アナウンサーが見ているモニターは数m離れています。
今あなたがPC・スマホで顔を近づけ見ているような状況ではありません。
そして、実際はかなりのスピードで押し寄せている波も、
画面で見るとどの程度の波で、
それが津波かどうかの判断をするのは非常に難しいのです。
これは、隣に居たもう1人のアナウンサーも同じですし、
そもそも次の進行をさらに隣に居るフロアディレクターから
指示を受けるなど、
スタジオに居る3人とも気づくのは非常に難しい状況なのです。
もう1つ、放送の司令塔であるサブから指示を出すという
パターンもありますが、
スタジオ以上にバタバタしているため、
津波を感知するのが遅れるのです。
結果的に、県内の映像を注視していた岩手朝日が先に気づき、
中継の連絡をとっていた岩手→東京に情報が伝わり、
東京から岩手朝日への呼びかけに至ったというのが
実際の動きだと思われます。
検証、そして対策
こうした直後の対応、そしてその後の原発報道も含め
メディア側は自問自答し、ひどく反省しました。
なぜなら災害報道は人の命や人生に大きく影響を及ぼすということを
これでもかというほどに思い知らされたからです。
一般の視聴者には届くことはなかった悲惨な状況も目の当たりにしました。
この山田アナウンサーの叫びも、
そうした葛藤や後悔の中で制作された検証番組で取り上げられたものです。
https://www.tv-asahi.co.jp/tsunagarou_02/
【情報操作】【隠ぺい】など“都合の悪いことはやらない”という
印象が強いマスコミですが、災害報道に関しては違います。
3.11の報道に携わった1人1人が、
当時の状況を事ある毎に振り返り、今の仕事に生かしています。
事実、キー局・地方局全てのテレビ局が
地震発生時の対応マニュアルを徹底的に見直しました。
そして毎日地震発生時の訓練をするようになりました。
いつ来るか分からない、来ないかもしれない。
それでも9年前の教訓を生かし、
震度4レベルでも速報を行っているのです。
変わった災害報道
東日本大震災を機に、
地震・津波・台風・大雨など全ての災害報道への姿勢が変わりました。
【自然は怖い】
徹底的に思い知らされたため、災害が起きた時の人員のかけかたや、
報道に割く時間なども大幅に変わりました。
情報を迅速に伝えることはもちろん、
各地方局との連携、より簡潔な中継体制の強化、
取材する側の危機管理、被災者への配慮。
全ての意識がガラっと変わった雰囲気を感じています。
確かにマスコミはだらしないところもあるし、
批判されて仕方ないし、未だ「マスゴミ」であることは否定しません。
ただ、客観的に見て20年前の報道よりは
幾分かマシになっているとは思うんです。
ネットの台頭でみんながより情報に触れられるようになって、
発信できるようになった今。
テレビもそういう情報を活用するようになり、
これまでの一方的な垂れ流しから、
より“マス”になっているのが今のメディアだと俺は思います。